「物理ボタン搭載DAC」でスマホをDAPに:Shanling UA3
1:専用DAPを手放せないわけ
「スマホ1台あれば何でもできる」と言われるこの時代ですが、今まで筆者は出先で音楽を聴く際は専用DAP(Walkman)を使ってきました。というのも、専用DAPなら音量調整はもちろん、再生・停止や曲送りのための専用のボタンが搭載されていてめっちゃ便利なんですよね。
そんな時に見つけたのがこの物理ボタンが付いたUSB DACことShanling UA3。「こいつをスマホに刺せば専用DAP並の操作性と音質を実現できるんじゃね?」と思って購入し、1か月ほど使ってみたので果たして専用DAPとどっちが良いのかを操作性を中心にレビューします。
2:「再生・停止ボタン」まで搭載
ボリュームボタンが付いたUSB DACはたまに見かけますが、このShanling UA3は筆者がスティック型の中で調べた限りでは再生・一時停止ボタンまで搭載している唯一の製品です。再生・停止って割とよく使うのでこれは便利。さらに、中央ボタンを押しながら接続すればUAC1.0モードになり、より多くの機器にドライバなしで接続できるようになります。
しかも、専用アプリを使えば音量ボタンの上下方向を変更できるのも気が利いています。
まあ、普通はスマホにぶら下げて使うので そもそも上下の向き、間違ってない? って思いますが。
筆者は専用のレザーケースを付けて使用していますが、ケースをつけると割と厚ぼったい印象。それでも専用DAP+スマホの2台持ちに比べればかなり小型です。ケーブルが直付けじゃないのでType-Cケーブルを用途に合わせて選べるのも高評価(直付けの短いやつだとPCでは使いづらい)。
ちなみに、専用レザーケースは特に機能はありませんが割と「いい感じ」なのでキズ対策としてもつけておいて損はないでしょう、約2000円という何とも言えない価格ですが。
小型ですが出力は3.5mmシングルエンドに加えて4.4mmのバランス出力にも対応。「せっかくだしバランス接続も試すか~」と思ったのですがバランス対応MMCXケーブルが想像以上に高かったので使用したことはありません、どうせほとんど音質は変わらないでしょうし。
また、物理ボタンでハードウェアボリュームをすぐに変更できるのも非常に便利です。スマホをDAPにした場合、音量調整がしっくりこない(調整の段階が荒いとか、音量がやたら小さい/大きい)場合がしばしばありますが、そんな時は中央ボタンを長押しすればハードウェアボリュームを音量ボタンで調整できるので簡単に対処できます。まあ、音量調整の細かさは専用DAPには勝てないのも事実ですが。
DAC内蔵ディジタルフィルタ(たぶん折り返し雑音除去フィルタ)の設定もアプリから行うことができますが、違いはかなり微妙。この辺の内容はAKMのHPで解説されているので読んでみると面白いと思います。
技術的な問題以外にも、外出先でこの構成で音楽を聴いているとなんか「ヤバい人」に思われそうという問題もあるという点には注意してください(まあ、あながち間違いでもないが…)。
3:高音質&低消費電力
こんなに音質に関する評価をしないDACレビューもめずらしい気がするので、いい加減音質に関するレビューをしていきます。
UA3は(最近火災から復活した)AKMのAK4493SEQを搭載しており、(MQAには対応していませんが)768kHz/32bitやDSD512にも対応しているなど、かなり高性能です。
音質比較に用いる曲は気取って「ラヴェル 亡き王女のためのパヴァーヌ(DSD2.8MHz)」を選定。再生はASIOでDSDネイティブ出力、比較対象はWASAPI排他出力のオンボードサウンド(ALC1220搭載ゲーミングマザーなのでオンボードの割には高音質)、使用したヘッドフォンはオーディオテクニカ ATH-AD2000Xです。
で、聞き比べた結果なんですがこれが結構違うんですよね。正直「DACなんて変えてもそんなに変わらんだろ」って思ってたんですが、UA3を聴いていてオンボードサウンドに切り替えるとSN比の悪さと高音の刺さる感じが気になりました。音の傾向としては
- バスパワーだけど高いSN比
- 低音から高音まで、クセのないバランスの取れた音
といった感じで突出した特徴はないものの曲に余計な「味付け」をせずにワンランク上の音を奏でてくれる、そんな「優等生型」なイメージです。
なんかクラシック曲で気取った感じのレビューをしてしまいましたが、実際は無駄にFLACでリッピングしたおニャン子の楽曲を聴きながら「河合その子の声が輝いてるわ~」くらいに思っています。ちなみに、おニャン子クラブ程度の楽曲(失礼)でも音質の違いは歴然としています。あと音質とか関係なく河合その子の声は可愛い。
また、こういうDACって音質最優先でめっちゃ発熱するという話をしばし見かけますが、製品情報ページで電力効率をアピールしているだけあってUA3は再生中に「ちょっと暖かくなる」程度で待機中はほぼ発熱せず、電力効率も高そうです。
4:スマホでDSD Native再生を行うまでの道のり
ちなみに、UA3には現在再生中のサンプリングレートを示すインジケーターが搭載されているのですが、スマホに接続して普通の音楽再生アプリでDSD音源を再生してもPCMのまま。具体的には
- Shanling純正のEddict Player
- VLC Media Player
このいずれでもDSDネイティブ再生は不可能でした。
その後もいろいろ試した結果、有料の再生ソフトであるOnkyo HF PlayerでUSBドライバをオン+DSDダイレクト転送に設定した場合のみDSDダイレクトで再生できました。しかし、まれですが音量調整がおかしくなったり音が一瞬途切れたりするのでやはり専用DAP並の使い勝手をスマホで実現するのは難しいようです。Winodwsでは普通に使えるので私のようにPCでの使用がメインの場合は問題ないですが(そもそもDSDを聴かない)、外出先での使用が多い場合はやはり専用DAPのほうが無難なのかもしれません。専用DAPはOSバージョンが古いといった問題や、CPU性能が低く操作性が悪いといった問題がありがちですが。
5:「どこでも手軽に高級オーディオ」
まとめとしては、ソフトウェア的な問題で専用DAPに軍配が上がる部分も残るものの、スマホやPCに接続すればいつでもどこでも手軽に専用DAP並の操作性と音質を実現できて非常、といった感じです。実際、筆者は完全にDAPからスマホ+DAC構成に移行しました。ソフトウェア周りは将来のAndroid OSの進化に期待したいところですが(AndroidはUAC2.0に対応しているはずなんだけどな…)。