Chromeがしれっと「FLoC」のテストを始めようとしていた件
1:突如出現した「プライバシー サンドボックス」の正体

特に意味もなくChromeの設定をいじっていた筆者(Chrome右上のメニューボタン→設定)。すると**「プライバシー サンドボックス」なる設定項目が追加されている**ことに気づきました。試用機能なのでオフになっているようですが、気になったので開いてみました。

クリックするとプライバシーサンドボックスのオンオフ切り替えと説明が表示されました。なんか「プライバシー保護」とか「オープンウェブの理念を支える」とかいろいろ書いていますが、ここで筆者はふと思いました。
これってFLoCじゃね?
というわけでリンクからプライバシーサンドボックスについての公式ページにアクセスしてみます。

このページでもやたらと「オープンウェブ」なるものを推していますが…

読み進めると「FLoC」の記載を発見。やはりプライバシーサンドボックスは 「FLoC」の試験運用でした(正確にはプライバシーサンドボックスの一部がFLoC)。一時「FLoC」はCookie廃止と並んで各種大手記事で批判されていたので、この際改めて「FLoC」とは何なのか、Googleの公式説明を読みながら簡単にまとめてみたいと思います。
2:FLoCをCookieと簡単に比較してみる

現在使われている"Cookie"という情報収集システム(厳密にはユーザー識別システム)にはプライバシー問題があるので廃止して"FLoC"に変えよう、というのがGoogleの目標なので、今回はCookieとFLoCの違いを簡単に比較してみたいと思います。“FLoCは"Federated Learning of Cohorts"の略称でコホートの連合学習と訳されるらしいですが、正直これだけ聞いてもワケが分かりません。というわけで、Google公式の説明ページを読んでみました(図は説明ページから)。
結論から言うと
- 行動履歴そのものをサーバーに送信して分析するのがCookie
- ユーザーが「どんな興味を持っているか」という情報のみを送信するのがFLoC
といった感じでしょうか。
具体例をあげるならば、部屋の掃除に興味のあるTさんを分析するとき、Tさんが「掃除機」についてのページと「ハウスクリーニング」についてのページを見ていたという情報をサーバーに送り、分析することで「Tさんは掃除に興味がある」と分析するのがCookieです。これだとTさんの行動がインターネット上のサーバーに送信されてしまうのでプライバシーの問題が生じます。
一方、FLoCはブラウザ内(ローカル)でTさんの行動を分析し、「Tさんは掃除に興味がある人のグループに属している」という情報だけをサーバーに送ります。ここで、“Cohort"が統計学において「共通する統計因子を持つ集団」という意味を持つ(ジーニアス英和)ので「グループ」という表現をしています(“flock"とかけているとか…)。これなら行動履歴を送信しないからプライバシーが守られるよね、というのがGoogleの言い分です。
こんな感じで、確かにFLoCはプライバシーを守りつつユーザーの興味を分析できると思います。しかし、
- プライバシーは守られるけど結局は「Google独占」なFLoC
- プライバシー問題はあるけどオープンに使えるCookie
どちらがより 「オープンウェブの理念」とやらに近いのか、筆者はやはりオープンなシステムのほうが優れていると思います。まあ、もう既にGoogle独占なのでそんな些細ないことは関係ない気もしますが。